最後の櫂入れが終わり大きく息を吸う。
「良し、吊ってもいいよ!」の掛け声が蔵に響く。
待ちに待った袋吊り作業が始まる。
若い蔵人たちは、僕に気を使ってか誰一人声も出さない。
淡々と作業している。
この思い天に届け__(松尾様)。
去年の秋から、賄いの加藤さんには『袋吊り用のサラシ』を縫ってもらった。
又、製品加工課の皆さんには一升ビン、アールビンの洗浄、そして壜慣らしのお酒を詰めていただきました。ご協力ありがとうございました。
そして何よりも蔵人の皆には、米洗い、夜中の麹づくりと厳しい仕事が多い中、不平不満の一言も言わないでついてきてくれました。
皆の思いが雫となって一斗瓶に溜まっていく。
ただただ感謝の気持ちで体がジーンと熱くなってくる。
蛇の目に取ったお酒を口に含めば、色々と思い出してさらにジーンとくる。
上出来である。
3月になれば「雫のオークション」、「秋田県の鑑評会」、「山形の鑑評会」。
そして5月は「全国新酒鑑評会」と気の休まる時がない。
杜氏の特有の職業病である「金賞症候群」である。
それでもこの病が少し良くなる時がある。
それは事務の山崎さんから「おめでとう杜氏さん」と電話が掛かってきた時だ!
それを今から楽しみにしている。
まだ出品していなのに気が早いかな?